道路や河川や港湾の補修・整備などのインフラ整備が主である土木業界は、自然災害の増加などの影響から復旧工事、修繕工事などの受注が増えています。その一方で、土木業界は「きつい・汚い・危険」をあらわす3Kのイメージが若者の間で定着しており、労働者の高齢化、人手不足問題などの課題を抱えています。そこでICT建機、AIなどの最新技術を導入することで業務効率化が進み、人手不足問題の解決に繋げることができます。
本記事では、土木業界の現状、課題を踏まえた上で、土木業界の問題を解決する最新技術について紹介します。
土木業界の現状
自然災害防止、インフラ整備のための公共的な建造物の建築を行う土木業界は、東京オリンピック前はオリンピック特需に伴い工事ラッシュが続いていましたが、オリンピック終了後に工事が減少しています。
その一方、近年では度重なる豪雨、地震、台風などの自然災害が頻発したことから、復旧工事の受注が増えています。さらに高度経済成長期に集中的に建設した橋、道路、上下水道などのインフラ設備の老朽化が進んでおり、更新の時期を迎えていることから今後も老朽化対策、修繕などの受注が増える可能性が高いです。
インフラ設備は災害、老朽化に伴う修繕などが長期的に必要であることから、今後も安定した需要が見込まれると言えるでしょう。

土木業界の課題
土木業界は、少子高齢化、若年層の労働者不足などによる人手不足、地方企業の廃業などさまざまな課題を抱えています。
とくに近年では高度経済成長期に建設されたインフラ設備の修繕、自然災害などの影響から工事受注は増えているものの、土木業界は就業者の減少、高齢化が進行しています。まずは、土木業界が抱える課題について具体的に紹介します。
人手不足
土木業界は技能労働者が不足しており、慢性的な人材不足問題を抱えています。土木業界は東日本大震災からの復興、東京オリンピックの開催に伴いインフラ設備などの需要が増えています。その一方、従来の人手では業務が回らず、人手が足りない状況です。さらに土木業界は重い荷物を運ぶ、危険な作業が多いなどの重労働が多く、離職者が多い傾向にあります。厚生労働省のデータによると、平成29年3月に高校を卒業し建設業に就職した人のうち3年以内の離職率は45.8%と高い水準です。この結果によると、新卒で建設業に就職した人の約半数が3年以内に離職していることとなります。土木業界の人手不足問題を解消させるには、AIなどを導入して業務効率化を進めるなど、労働者が働きやすい環境づくりを行う必要があると言えるでしょう。
高齢化
土木業界の仕事は「きつい・汚い・危険」の頭文字「K」3つを取った3kのイメージを持つ若者が多く、若手従事者の採用が難航しています。国土交通省の発表によると、建設業の従事者の年齢の割合は55歳以上が35.2%、29歳以下が11.6%と若手労働者の割合が少ない状況です。さらに総務省の「労働力調査」(※(H30年平均)を元に国土交通省にて推計)によると、60歳以上の高齢者(82.8万人、25.2%)は、10年後には大量離職となると見込まれています。また日本では少子高齢化が進んでいることから、若手労働者の獲得が難しくなっているのが現状です。今後も高齢化が進み、若手労働者が少ない状況が続くと数年後に労働者が不足し、インフラ設備における工事を継続できなくなる恐れがあります。
地方企業の廃業
近年では若者が地方から都心部に流れる傾向により、地方企業が廃業に追い込まれています。とくに廃業が多いのは、地方の資本金1000万円以上5000万円未満の規模の会社、中小企業です。そもそも土木工事は営業所が所属している都道府県で「建設業許可証」という許可を取る必要があるので、地方の労働者人口が削減すると地方における受注動向に影響が出る恐れがあります。そのため、人の少ない地方では公共投資金額が少なくなり、インフラ設備の修繕が進まなくなる可能性が高くなります。
土木業界の最新技術
土木業界は人手不足の解消、若手従事者不足、高齢者の離職による熟練技術の継承問題など、さまざまな課題を抱えています。
そこで、それらの問題を解消させるために3次元モデルデータ、ICT建機、AI、ドローンなどの最新技術の導入が進められています。最新技術の導入により従来では人の手で行われてきた作業を機械やAIに代替でき、人手不足問題の解消に繋げることができます。さらに業務効率化がスムーズになり、労働時間の短縮、生産性の向上にも役立ちます。
では、実際に土木業界で導入されている最新技術や取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか?次に、土木業界で進められている取り組み、最新技術について詳しく解説していきます。

i-Constructionの活用
土木業界にICTを活用して生産性の向上を目指す取り組みのひとつである「i-Construction」を活用することで、業務効率化、生産性向上などに繋げることができます。i-Constructionとは、測量から設計、施工、検査、維持管理に至る事業プロセスをICTの導入によりスムーズにし、生産性向上を目指す取り組みのことです。2016年9月12日に開催された第1回未来投資会議では、元安倍総理が「建設現場の生産性を2025年までに20%向上させる」と指示を出したことにより、「i-Construction」の流れが全国的に加速する運びとなりました。
本項目では、i-Constructionの活用例としてCIM、ICT建機の特徴、導入メリットをそれぞれ紹介します。
CIM
土木業界にCIMを導入することで、工事着工後に起こりうる問題、トラブルを把握できるようになり、ミスを未然に防ぐことができます。CIMとは、「Construction Information Modeling/Management」の略で、国交省によって提言された建設業務の効率化を目指すための取り組みのひとつです。CIMでは、3次元モデル、仕様などの属性情報を共有し、管理を行います。CIMの導入により、3次元モデルデータを踏まえた上で議論、検討することにより、今までは着工までに気づかなかった課題、問題を顕在化することが可能となり、工事の手戻りやミス、トラブルを未然に防ぐことができるようになります。
ICT建機
自動運転により作業を行うICT建機の導入により、これまで人の手で行ってきた作業を機械に代替できるようになり、従業員の負担軽減、業務効率や生産性の向上などに役立てることができます。ICT建機とは、建設工事業務の効率化、生産性向上などを目的に導入された重機のことです。ICT建機を工事に利活用すれば業務の自動化、簡略化が可能となり、工期短縮や人件費コスト削減、人手不足問題の解決にも役立ちます。
AI
国が推進しているi-Constructionの取り組みにより、土木業界のAI活用が進んでいます。i-Constructionでは、ICTの活用による生産性向上を目指していますが、建設現場から得られるビッグデータをに活用するには、近年技術の進展が進んでいるAIなどの活用が必要です。AI とはArtificial Intelligence(人工知能)の略であり、コンピュータがデータを分析・推論・判断・学習などを行う技術のことです。AIを土木業界に導入し、作業やデータを学習させることで、労働をAIに代替させることが可能となり、労働時間やコストの短縮に繋げることができます。
では、実際に土木業界で導入されているAI技術にはどのようなものがあるのでしょうか?次に、土木業界で活用されるAI技術について紹介します。
自律走行ロボット
建設現場に自律走行ロボットを導入することで、人の手で行われてきた労働作業をロボットに代替させることが可能となり、労働負担の軽減、労働時間の短縮などに繋げることができます。自律走行ロボットとは、遠隔操作により運搬作業などを行う機械のことです。自律走行ロボットでは資材運搬の他にも、コンクリートを流し込む作業などができるものもあり、導入によって業務効率の改善、人件費コストの削減効果などが期待できます。
ドローンによる現場監視
土木の建設現場でドローンによる現場監視を行うことで、これまで人の手によって行われてきた作業をドローンに代替でき、労働時間の短縮、安全性の向上に役立てることができます。現場監視としてドローンを使用する場合、ドローンを現場上空に飛ばし、搭載されているモニターで現場確認することが可能となります。ドローンが人の代わりに現場確認を行うので、危険な作業を削減でき、土木業界における仕事のイメージアップにも繋げることができます。
土木現場の効率を図るならSUPPOTがおすすめ
土木現場の効率を図るなら、建設現場向け作業支援ロボットレンタルサービス「SUPPOT」がおすすめです。
SUPPOTとは、建設現場の資材運搬作業をサポートする作業支援ロボットがレンタルできるサービスです。SUPPOTのロボットは簡単な操作で遠隔操縦ができるよう工夫されているため、経験の浅いオペレーターでも安心して利用できます。さらにSUPPOTではロボットを移動させながらコンクリートを流し込む作業も可能なので、道路、タンクなどコンクリートを多く使用する土木業界では、大幅な業務効率の改善が期待できることでしょう。
SUPPOTでロボットを導入することで、現場での資材運搬作業やコンクリート流し込み作業などの自動化が可能となり、人件費コストの削減、業務効率化などに繋げることができます。

まとめ
土木業界が抱える人手不足などの問題は、建設機械のICT化、AI化によって作業を機械、ロボットに代替させることで解消に繋げることができます。その一方、ICT建機やAIの導入にはコストがかかるため、中小企業のゼネコンが多い土木業界では導入費用が足りないことも考えられます。
そこでおすすめなのが、作業支援ロボットのレンタルサービス「SUPPOT」です。SUPPOTはレンタルサービスなので初期費用もかからず、コストを抑えた運用が可能です。さらにSUPPOTは最大で100kgまで積載可能なため、建設現場に導入することで労働者の負担軽減に役立ちます。
さらにSUPPOTの作業支援ロボットは、悪路、傾斜などの不整地走行を得意としており、インフラ整備など不安定な足場の多い土木業界での利用に適しています。SUPPOTの利用を検討されている方は、運営会社の「ソミックトランスフォーメーション」へお問い合わせくださいませ。
参考文献
『建設業及び建設工事従事者の現状』国土交通省https://www.mlit.go.jp/common/001180947.pdf
『労働力調査 (基本集計)』総務省統計局(2022)https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/pdf/gaiyou.pdf
『学卒就職者の離職状況調査結果』厚生労働省https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/content/contents/001110184.pdf