国土交通省は、建築現場にICTを活用し生産性向上を目的とした「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の導入を進めています。「i-Construction」の導入により、ICT技術の活用を中心として規格の標準化、施行時期の標準化などを実現させ、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目指しています。建築業界の生産性向上を目指しています。
本記事では、最新技術を取り入れる建設DXについて解説しつつ、建設のデジタル化によって解決できる課題や、建設現場で注目される最先端技術の紹介をしていきます。
最新技術を取り入れる建設DXとは?
最新技術といっても、実際にはどのようなものがあるのでしょうか。まずは、建設業界で広がっている建築DXについて解説します。

建設DXとは?
建設DXとは、建設業界が既存のビジネスから脱却し新たなデジタル技術を取り入れることで、業界にある問題を解決し、業務や組織に変革をもたらすことを指します。デジタル化とICT化はまったくの別物ではなく、ICT化はデジタル化の中に含まれているものです。 建設業のDX推進に欠かせない技術については、主に下記の5点が挙げられます。
- 1. BIM(Building Information Modeling)による3Dモデルで設計・施工・管理を一元管理
- 2. ドローンによる測量
- 3. 3Dプリンタによる部材のプレキャスト化
- 4. 建設ロボットによる作業効率化
- 5. 3Dスキャンによる施工管理自動化
DXと関わりの深い「2025年の崖」
DXは経済産業省が主導となり、推進されています。その理由は、同じく経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」にあります。では、「2025年の崖」とは一体何なのでしょうか。2025年の崖とは、「DXの実現ができなければ、2025年以降、年間で最大12兆円の経済損失が生じる可能性がある」というものです。経営者は、DXの必要性を理解していながら、組織や事業の課題により、DXを推進できていない傾向にあります。現場サイドの抵抗も大きく、いかにこれを実行するかが課題となっています。このまま使い勝手の悪いシステムやブラックボックス化の進んだシステムを使用し続けるのは、業務効率を落とすでしょう。この課題を克服できない場合、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性があると試算されています。

建設業界の2024年問題
日本の建設業界が直面する「2024年問題」とは、2024年に施行される「働き方改革関連法」の影響を受けて、建設業界が対応しなければいけない問題のこと。建設業では、一部の働き方改革関連法案の適用に5年間の猶予期間が設けられており、2024年4月から適用されます。
働き方改革の影響 2024年から建設業に適用される時間外労働の上限規制により、従来の長時間労働に依存していたプロジェクト管理は困難になります。これに対処するためには、生産性の向上や効率化が不可欠です。
割増賃金の引き上げ 働き方改革の一環として、割増賃金の引き上げが課題となっています。2023年4月からは、中小企業における60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%へと引き上げられます。時間外労働や休日労働に対する賃金が引き上げられることで、労働コストが増加し、企業の経営に影響を与える可能性があります。これにより、さらに効率的な労働力の利用や労働環境の改善が求められます。
建設のデジタル化によって解決できる課題
建設のデジタル化をすることによって建設業界はどのように変わることができるのでしょうか。本項目では、建設のデジタル化によって解決できる課題について紹介します。
1. 人手不足の解消
国土交通省によると、建設業における2023年の平均就業者数は479万人と言われており、ピーク時(1997年平均)から約30%も減少しているという調査結果が出ており、それは現在でも大きな課題となっています。技能労働者の減少が深刻化しているという状況を変えるためにも、建設DXは役立ちます。建設DXを取り入れることにより、作業の効率化と労働時間の削減を実現できます。作業員は危険な作業や煩雑な業務から解放されるため、従来のアナログな施工方法よりもストレスが軽減されます。そうすることで働き手のモチベーション向上につながるのです。また、こうした技術の活用は、少人数・短時間で従来以上の成果を生み出すことができ、必要なリソースを削減することも可能です。そのため、建設DXは進めるメリットとして建設業界で注目されているのです。
2. 品質の向上
図面や施工に必要な資料をデータ化し、タブレットで管理することで、施工業務の正確さが増します。紙媒体では難しかった比較検討が容易にでき、設計ミスが減らせるほか、2次元図面で問題に上がることが多かった、実際に建ててみないとわからない。といったような事態を減らすことができるのです。また、施工ロボットの導入により作業員の安全が確保できるだけでなく、精密な作業もミス無く長時間行うことが可能なため、施工品質の向上を図ることができます。
3. 生産性の向上
項目の最初でも取り上げたとおり、日本における建設業界の就労者数は年々減少しているのが現状です。今後は少人数で業務の成果を達成しなければならない可能性が出てきています。また、熟練の従業員が引退し、技術が引き継がれないまま現場を離れてしまうと、これまでに培った建設技術が失われてしまいます。従来のやり方をこのまま続けることで、人手が少なくなるだけでなく、建設技術が失われ、業界は衰退していくでしょう。そこで、建設DXを取り入れ、作業者の支援を行うことで、現場の安全性・効率性を向上させる動きが広まっています。デジタル技術によって機械が自ら考え、施工を進めることで、省力化・生産性の向上が実現できます。

建設現場で注目される最先端技術とは
ここまで建設のデジタル化などについて触れてきましたが、では建築現場では実際にどのような技術が取り入れられているのでしょうか。本項目では、建設現場で注目される最先端技術について紹介します。
1. BIM(Building Information Modeling)
BIMは、建物の設計、施工、運用に関する情報を3Dモデルで統合管理する技術です。これにより、プロジェクトの全てのフェーズで一貫した情報の共有が可能となり、各関係者がリアルタイムでアクセスできます。BIMの最大の利点は、設計から施工、運用までのプロセス全体を可視化し、効率化できる点にあります。情報の共有がスムーズに行われることで、設計ミスや施工の手戻りが大幅に削減され、プロジェクトの円滑な進行が可能になります。たとえば、清水建設は大規模プロジェクトにBIMを活用することで、工期の短縮とコストの削減を実現しています。
2. AIと機械学習
AIと機械学習技術は、建設プロセスの最適化や品質管理に革命をもたらしています。大量のデータを解析し、効率的な作業計画やリスク管理を自動で行います。ドローンを用いた現場監視とAIによるデータ解析は、施工の進捗管理を自動化し、リアルタイムでのリスク評価と予防策の提案を可能にします。たとえば、大成建設はAIとドローンを組み合わせた現場管理システムを導入し、作業の効率化と安全性の向上を実現しています。
3. ロボティクス
建設現場での作業を自動化するロボット技術は、特に労働力不足の解消と安全性の向上に貢献しています。自律型の建設ロボットは、重機の自動運転や建設作業を効率的に行います。 ロボティクスの導入により、重労働や危険な作業をロボットに任せることで、労働者の負担を軽減し、安全性を高めることができます。鹿島建設が開発した自律型建設ロボットは、現場での自動化を進め、作業の効率化に大きく寄与しています。
4. レファブリケーション(プレハブ工法)
プレファブリケーションは、工場で事前に建材を製造し、現場で迅速に組み立てる工法です。これにより、工期の短縮と品質の均一化が図れます。プレファブ工法は、天候に左右されずに安定した施工が可能なため、計画通りにプロジェクトを進めることができます。積水ハウスはプレファブ住宅で高い施工品質と短期間での完成を実現し、多くのプロジェクトでこの手法を採用しています。
5. IoT(Internet of Things)
IoT技術は、建設機械や工具、建物自体をインターネットに接続し、データをリアルタイムで収集・分析する技術です。これにより、機器の稼働状況や施工状況を常に把握できます。 IoTを活用することで、設備の故障予知や効率的なメンテナンスが可能となり、プロジェクトの効率化とコスト削減が実現します。日立建機が提供するIoTソリューションは、機械の稼働率を向上させ、現場の生産性を高めています。
6. VR/AR(バーチャルリアリティ/拡張現実)
VR/AR技術は、設計段階から施工、メンテナンスまでの全プロセスを支援します。仮想空間でのシミュレーションや、現場での作業手順の確認が可能です。設計段階では、仮想モデルを用いて詳細な検証と修正が行え、施工のミスを減らすことができます。現場では、AR技術を活用して設計図を確認することで、作業の効率化と精度向上が期待されます。清水建設はAR技術を用いて、現場での設計図確認を効率化し、作業の正確性を高めています。
建設現場で自律走行ロボットをするならSUPPOTがおすすめ
建設現場で自律走行ロボットを導入するなら、建設現場向け作業支援ロボットレンタルサービス「SUPPOT」がおすすめです。SUPPOTとは、建設現場の資材運搬作業をサポートする作業支援ロボットをレンタルできるサービスです。
「SUPPOT」で使用できる作業支援ロボットは悪路や傾斜などの不整地走行を得意としており、なおかつ簡単な操作で遠隔操縦ができる仕様となっているので、人手不足が進む建設現場での利用に最適です。さらにロボットは最大で100kgまで積載可能であり、建設資材の運搬に使用することで人間の筋肉に大きな負担を与える重筋作業を削減します。
「SUPPOT」の導入により現場での資材運搬作業の自動化が可能となり、建設現場でのi-Construction活動を促進します。

まとめ
i-Constructionとは、建築業界全体を改善するための取り組みであり、導入することで業務効率化、生産性の向上など建設生産システム全体の生産性を向上させることが可能です。
ただし中小企業の多い建設業界では、i-Constructionを導入する費用が足りないケースも多くなり、政府の施策である「i-Construction(ICT施工)の導入に関する補助金」を利用しなければならない企業も多くなります。
そこでおすすめなのが、作業支援ロボット「SUPPOT」レンタルサービスの利用です。SUPPOTは1ヶ月からレンタル可能なサービスなので、初期費用もかからず無駄なく利用することが可能です。さらにレンタル利用後は電話サポート、保険付帯、故障時即代替対応などのサポートを受けられるので、ロボット初心者の方でも安心して利用できます。
SUPPOTの導入により重い荷物の運搬作業を削減できるため、人件費や労働コストの軽減、生産性の向上などに繋げることができます。SUPPOTの利用を検討されている方は、ぜひ運営会社であるソミックトランスフォーメーションへお問い合わせください。
参考文献
「DXレポート」経済産業省https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf
「国土交通白書」国土交通省(令和3年)https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r02/hakusho/r03/pdfindex.html
「建設業を巡る現状と課題」国土交通省(令和4年)https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001610913.pdf