国土交通省は、建築現場にICTを活用し生産性向上を目的とした「i-Construction(アイ・コンストラクション)」の導入を進めています。「i-Construction」の導入により、ICT技術の活用を中心として規格の標準化、施行時期の標準化などを実現させ、建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させることを目指しています。建築業界の生産性向上を目指しています。
本記事では、建設業界において土木工事業界の抱えている課題を解説しつつ、ICT技術を全面的に活用した土木工事の工程や、情報化施工推進戦略を踏まえた上で、ICT土木の事例紹介のうち、特に注目度の高いMMSを紹介していきます。
土木工事業界の抱えている課題
土木工事業界は、国や地方からの受注を大きな軸として成立している業界です。しかし深刻な人手不足などが続いていることから今後、将来を楽観視することはできません。まずは土木工事業界の抱えている課題について、それぞれ詳しく解説します。
土木工事の特徴
前提として土木工事とは、土木工作物(建物以外の建設工事全般)を総合的な企画、指導、調整のもとに建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む。)です。主な工事として、基礎工事・造成工事・外構工事が挙げられます。また現場の認識としては、「土木工事は地面の下」で、「建設工事は地面の上」と言われることが多いです。具体的には、道路や鉄道、トンネルやダム、橋などといった公共事業に関連した工事を土木工事が主に担当しているのです。

業界全体のトレンドの変化
日本は1950〜70年代に高度経済成長をむかえ、さらにはバブル景気などの影響もあり、土木工事業界全体は「新たに作る工事」がメインでした。しかし、その流れも現在は落ち着き、それに変わり、新規建設だけでなく老朽化したインフラの整備や維持管理といった工事の需要が高まっています。特に、高度経済成長期に整備されたものは、現在50年以上が経過し老朽化が進んでいます。国土交通省によると、50年以上経過するインフラ建築の割合は、道路橋梁については、2019年時点では27%であったのが、2029年には52%に、港湾岸壁注については、2018年時点では17%が2033年時点では58%になると予測されているためです。
人手不足と高齢化
土木工事業界では若年入職者が確保できず、年々、担い手の高齢化が進んでいます。厚生労働省の資料によると、2016年時点で建設業就業者の約3割が55歳以上、29歳以下は約1割という数字が出ており、次世代への技術承継が大きな課題となっています。
地方では廃業する会社が増加傾向に
人手不足と高齢化にも関係する問題ですが、廃業する会社が増えていることも問題となっています。特に廃業が目立つのは地方の中堅および中小企業です。人員不足により、受注できる工事があっても、その工事は受注できず、売上や利益が減ることで経営が難しくなります。また、土木工事は営業所が所属している都道府県で許可を取らなければなりません。そのため業務がその地域に限定される傾向にあり、その地方における受注動向の影響が大きく出てしまいます。現状、知事許可業者数において、秋田県については、2008年時点では4,633業者あったのが、2016年には3,938業者の15%減に、長野県は8,847業者あったのが、7,655業者の13%まで減少しているのです。
ICT技術を全面的に活用した土木工事の工程(通称ICT土工)とは?
土木工事業界の抱えている問題を取り上げてきましたが、これを解決するには、新しく、技術や制度を導入していく必要があります。本項目では、ICT技術を全面的に活用した土木工事の工程について紹介します。
ICT土工とは
「ICT土工」とは、国土交通省が推進している、ICT技術を全面的に活用した土木工事の工程のことです。ICTは、「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略になります。国土交通省では、「ICT土工」等の施策を建設現場に導入することによって、建設生産システム全体の生産性向上を図り、もって魅力ある建設現場を目指す取組であるi-Constructionを進めています。
ICT技術を活用した土工工事の工程について
ICT技術を活用した土木工事の工程は、測量・施工・検査・積算基準などに渡ります。また、3次元データを活用するための15の新基準や積算基準を整備します。国の大規模土工は、発注者の指定でICTを活用するなど、中小規模土工についても、受注者の希望するICT土工を実施することを可能になります。

2008年より策定された「情報化施工推進戦略」
ICT施工の歴史は「情報化施工」から始まりました。本項目では、「情報化施工」の始まりと、情報化施工を推進するため、2008年より策定された「情報化施工推進戦略」について具体的に紹介します。
「情報化施工」とは
建設事業の調査、設計、施工、監督・検査、維持管理という建設生産プロセスのうち「施工」に注目をし、ITCの活用により各プロセスから得られる電子情報を活用することで、高効率・高精度な施工を実現します。さらに施工で得られる電子情報を他のプロセスに活用することによって、建設生産プロセス全体における生産性の向上や品質の確保を図ることを目的としたシステムです。
情報化施工が推進された背景
もともと「情報化施工」とは、1970年代に、施工中の現場計測から得られた情報によって設計段階の設計案を検討し直し、施工中の設計変更に柔軟に対応することを目的とし策定されたものでした。2000年以降に国土交通省は、建設施工の生産性向上、品質確保、安全性向上、熟練労働者不足への対応など、建設施工が直面している諸課題に対応するITC施工技術(情報化施工)の普及に向けて、産学官の委員により構成する「情報化施工推進会議」を2008年2月に設立されました。
国土交通省での取り組み
上記で取り上げた、情報化施工推進会議、情報化施工関連通達、ITCを活用した施工管理などをおこなっています。情報化施工推進会議では、中長期的な目標となる情報化施工の目指す姿を明らかにし、建設事業の課題と情報化施工への期待ならびに情報化施工推進を巡る現状を整理することで、本推進戦略の継続的な実効性を確保するための体制と施策を示し、定期的にフォローアップを実施しています。また、国土交通省サイトでは、情報化施工普及のための施工効率や、施工品質の検証などを目的とした試験施工及びアンケート調査を実施する工事の一覧を掲載しています。

MMS導入によるICT土工への展開について
では、ICT土木の現場では実際にどのようなことが行われているのでしょうか。本項目では、ICT土木の事例紹介のうち、特に注目度の高い「MMS」について具体的に紹介します。
MMSとは
「MMS」とは、車両搭載型の計測装置であり、「Mobile Mapping System(モービルマッピングシステム)」の略になります。車両に以下の4点を搭載し、道路および周辺の3次元座標データと、連続写真を取得します。
- ・レーザー計測器
- ・GNSS装置(衛星を用いた測位システムの総称)
- ・IMU(慣性装置)
- ・デジタルカメラ
ICT土工への展開について
MMSはすでに公共測量において、作業規程の準則「車載写真レーザ測量」を用いて、道路の現況調査をすることで、道路管理における大縮尺地形図の作成に活用されています。他にも、道路の防災点検、特殊車両などの通行許可申請の迅速化を実現することができます。それだけにとどまらず、様々なシミュレーション、資料作成、自動運転向けダイナミックマップの構築としても活用が期待されています。
国土交通省によるデータ提供事業を開始
国土交通省では、道路管理の効率化を図るため、2018年よりMMSによる三次元点群データ等の収集・活用に取り組んでいます。2022年8月からは今般、公募により選定した(一財)日本デジタル道路地図協会を提供事業者としてMMSによる三次元点群データ等の提供事業を開始しました。国土交通省が収集した三次元点群データ等を広く公開し提供することにより、道路交通上の諸課題の解決に向け、民間企業等による多様なアプリケーション開発の促進を図ることが目的です。
建設現場でi-Constructionを推進するならSUPPOTがおすすめ
建設現場でi-Constructionを導入するなら、建設現場向け作業支援ロボットレンタルサービス「SUPPOT」がおすすめです。SUPPOTとは、建設現場の資材運搬作業をサポートする作業支援ロボットをレンタルできるサービスです。
「SUPPOT」で使用できる作業支援ロボットは悪路や傾斜などの不整地走行を得意としており、なおかつ簡単な操作で遠隔操縦ができる仕様となっているので、人手不足が進む建設現場での利用に最適です。さらにロボットは最大で100kgまで積載可能であり、建設資材の運搬に使用することで人間の筋肉に大きな負担を与える重筋作業を削減します。「SUPPOT」の導入により現場での資材運搬作業の自動化が可能となり、建設現場でのi-Construction活動を促進します。

まとめ
i-Constructionとは、建築業界全体を改善するための取り組みであり、導入することで業務効率化、生産性の向上など建設生産システム全体の生産性を向上させることが可能です。
ただし中小企業の多い建設業界では、i-Constructionを導入する費用が足りないケースも多くなり、政府の施策である「i-Construction(ICT施工)の導入に関する補助金」を利用しなければならない企業も多くなります。
そこでおすすめなのが、作業支援ロボット「SUPPOT」レンタルサービスの利用です。SUPPOTは1ヶ月からレンタル可能なサービスなので、初期費用もかからず無駄なく利用することが可能です。さらにレンタル利用後は電話サポート、保険付帯、故障時即代替対応などのサポートを受けられるので、ロボット初心者の方でも安心して利用できます。
SUPPOTの導入により重い荷物の運搬作業を削減できるため、人件費や労働コストの軽減、生産性の向上などに繋げることができます。SUPPOTの利用を検討されている方は、ぜひ運営会社であるソミックトランスフォーメーションへお問い合わせください。
参考文献
『国土交通白書 2020』国土交通省 https://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/r01/hakusho/r02/html/n1212000.html
『建設業及び建設工事従事者の現状』国土交通省https://www.mlit.go.jp/common/001180947.pdf
『地域建設業を取り巻く現状・課題』国土交通省https://www.mlit.go.jp/common/001172541.pdf
『ICT活用工事の概要』国土交通省https://www.hrr.mlit.go.jp/gijyutu/jyouhouka/12-kengaku/H29.5.23-25koshukai_gaiyou.pdf